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新しい時代の教育者の養成をめざす山口学芸大学では、従来の教育システムにとらわれない大学教育をすすめています。子ども達をとりまく環境が複雑に変化している今、夢と理想を抱いて入学してきた学生達をどう育て教育の現場へ送り出していくべきなのか・・・教育の分野で高い見識をもって活躍しておられる見城美枝子さんと加屋野洋学長が語り合いました。
けんじょう・みえこ 現在青森大学社会学部にて教鞭をとり、建築社会学、メディア文化論、環境保護論を講義している見城美枝子さんは、著作、対談、講演、テレビでの活躍は目覚しく、講演題目もバラエティーに富んでいる。女性ながらの視点で教育や環境・福祉などの問題を鋭く、優しく語りかける様は、誰もが深く納得させられてしまう。
かやの・ひろし 山口大学理学部で教授・理学部長・工学博士。山口大学を定年退官後、山口芸術短期大学教授に。学生部長を経て、平成17年4月より山口芸術短期大学学長。現在、山口学芸大学、山口芸術短期大学学長。主な担当授業科目は情報処理論、情報科学など。
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学長 今春開学しました山口学芸大学を記念して、見城美枝子さんと対談させていただくことに喜びを感じています。見城さんは、実際に大学の教壇にも立たれ、また教育研究の方面でご活躍されており、教育全般にわたり造詣が深い方だと承知しております。本日は、大学での教育者・保育者の養成についての課題やお考えなどをお聞かせ願えたらと思います。よろしくお願いします。
まず、私から山口学芸大学を設立した理由や背景などについて簡単にご説明します。現在は深刻な少子化の時代です。だからこそ優れた教育者・保育者の養成が大事だと考えました。母体となっています山口芸術短期大学は幼稚園や保育所から高い評価をいただいており、その芸術教育を基盤にした教育方法を生かした四年制大学での教育者養成をめざしております。
定員は1学年50人と少人数制にしています。教育環境を充実させて、いい先生たちを養成したいと考えております。さらに、本校の教育者養成の特徴は、小学校と幼稚園の教員免許と保育士の資格を同時に取ることができるという点です。子ども達の成長に合わせて一貫して育てることができる人材を育成したいというねらいがあります。
見城 この度は、開学おめでとうございます。すばらしい大学の歴史が始まることをお祈りします。さて今学長がお話しされた方針は、時代の変化をしっかり捉えておられると思います。と申しますのは、数年前から「幼保連携」という考えがテーマになっています。かつては接点がなかった幼稚園と保育所の教育体制を連携させる動きが出てきています。幼稚園教諭と保育士の資格のどちらも同じ大学で取れるというのは非常に重要なことだと思います。もちろん、保育士としてのみの保育のあり方について考えることも大事ですが、今は保育所から幼稚園に移っていく子がいたり、幼稚園と保育所を一緒に経営するところがあったりで、教育環境が多様な時代を迎えています。ですから、幼稚園のことを全然わからない保育士さんでは困る場面もあったり、保育所のことがわからない幼稚園の先生でも困ることもあります。それに、小学校1年生というのはほんの少し前まで幼稚園生であった訳ですから、連携していることが大事ですね。
学長 そうですね。だからその辺を理解していない先生が担任すると、小学校1年でもう学級崩壊なんてことも起ったりするんですよ。幼稚園の子どもの育ちや発達の有様を知っていれば、上手く対応できることもあると思うのです。
見城 その点、山口学芸大学はいい試みをされたと私は思います。今、社会のニーズが保育所・幼稚園・小学校連携の方向へ向かっているのは明らかですから、山口学芸大学で学ぶ学生さんは、保育所で働くことになったとしても、保育士としての乳幼児の保育と、遊ぶ・学ぶといった幼稚園で行う知育の部分を併せて担っていけると思います。また小学校で働くことになったとしても、就学前の子どもについての理解によって、より効果的な指導ができます。
学長 従来は保育というと、子ども達の生活リズムを確立するのが主な役割だったようですが、今は求められる部分が多様化しているということですね。
学長 理想に向かって幼稚園や小学校の教員免許と保育士の資格を同時に取得するために入学してきた学生達は、卒業するまでに相当な単位数を取らないといけません。学生にとっては大きな負担だと思います。大学としては、講義や演習などの勉学に励むことだけではなく、クラブ活動などキャンパスライフもエンジョイして余裕のある学生生活を送ってほしいという気持ちがあります。ですが、三つの資格を同時に取るとなると、それなりの努力をしないといけないというのも現実ですね。
見城 学生達は同時取得という意気込みで1学年からきっちり勉強し、取れる単位をどんどん取っていき、2学年では少し専門科目が多くなってきますから、その段階で専門の単位を取っていけば大丈夫ではないでしょうか。全く違うことを二つするわけではないのですから…。
学長 私達の大学ではまず保育士と幼稚園の教諭、次に小学校教員になるための勉強をするというシステムにしております。
見城 なるほど、年齢的に段階を追っているので学びやすいですね。
学長 山口県内でもはじめての試みですから、いい教育システムにしていきたいです。山口学芸大学は山口芸術短期大学を基盤にしています。感性とコミュニケーション能力をつけることを大切にし、音楽や美術を中心とした芸術による教育を特徴にしています。その方面に経験のある先生方が多数おられるので、その点では自信を持っております。
ただ一つ問題と思われるのは、そうして養成した感性豊かな学生達を採用側が認めてくれるかということなんです。現状の教員採用試験では、いわゆる点数が高い人が採用されています。しかし、その採用試験の成績が良いからといって、実際その人がすばらしい教育者であるとは限らない、と私は思うのです。
見城 採用試験において成績の良い人を採用するということは、採用基準としてはある意味当然のことと思います。ただ、試験で良い成績をとっても教育者に向いていない人がいるというのも事実です。そこには、いろいろ難しい課題がありますが、その解決策の一つとして最近教員養成大学院の設立があります。一般的な教育学部の大学院との違いが明解ではありませんし、まだ議論の余地がありますが、簡単にいえば教育学部の大学院はどちらかというと"教育学の大学院"で、教員養成大学院は"教員になりたい方がさらにグレードアップする大学院"であるということです。