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設置認可申請書

Ⅰ 設置の趣旨及び必要性

1 教育研究上の理念・目的

(1)子どもをめぐる社会的状況

 少子化、核家族化、都市化、情報化、国際化など社会の急激な変化は、人々の価値観や生活様式にこれまでにない多様化をもたらし、その結果、人間関係や地縁的なつながりの希薄化、過度に経済性や効率性を重視する傾向などが問題点として指摘されるようになった。

 このような社会的状況は、子育てをめぐる地域社会や家庭の環境をも変化させ、その教育力の低下は深刻な状況になっている。

(2)子育てに対するニーズの増大と多様化

 また、親の「育児不安」への対応、「一時保育」や「幼稚園での預かり保育」など、子育てに対する新たなニーズが生じてきた。そのため、「次世代育成支援対策推進法」や「エンゼルプラン」の制定などの対策がとられ、また、各地で、親や地域の相互支援組織が生まれるようになった。

 一方で、地域社会や家庭とともに幼児教育を専門的に担ってきた幼稚園等についても、前者が十分機能しなくなった現在、その役割の見直しが求められている。

(3)幼稚園等の教員の在り方

 中央教育審議会答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について」の中でも、家庭・地域・幼稚園等施設の三者による総合的な幼児教育の推進、幼児の生活の連続性及び発達や学びの連続性を踏まえた幼児教育の充実の必要性が述べられている。

 さらに、答申の中では、これからの幼稚園等施設においては、「これまでの役割に加え、家庭や地域社会における教育力を補完する役割、家庭や地域社会が、自らその教育力を再生し向上していく取り組みを支援する役割を担うことが求められる。」としている。

 このように、これからの幼稚園等の教員(以下、幼稚園教員等という。)においては

①子どもに対する対応

②保護者及び地域に対する対応

③幼稚園と保育所との一体性や小学校との連続性に対する対応

など、これまで以上に幅広く深い専門性が必要になるものと考える。

(4)山口学芸大学教育学部子ども教育学科を設置する必要性

既に「学校法人宇部学園」が設立した「山口芸術短期大学保育学科」において昭和49年以来、保育者養成(幼稚園教諭二種免許・保育士資格の取得)を行い、さらに平成15年より、より高度な保育者養成(幼稚園教諭一種免許・保育音楽療育士資格の取得)を行うために「同大学専攻科幼児教育専攻(2年課程)」を開設した。しかし、以下に示す3つの理由から、さらに四年制大学・山口学芸大学(以下「本学」という。)教育学部子ども教育学科を設置する必要があると考える。

その理由の1つは、すでに述べたように新しい時代に対応できる高度な専門知識と使命感を持つ幼稚園教員等が求められていることである。特にこれからは、

①生涯発達的な視点から、幼児の生活や発達・学びの連続性、すなわち保育所、小学校教育との連携・接続を踏まえた幼児教育の充実に応えることができる幼稚園教員等(保育、小学校教育に対する理解、さらには保育士資格、小学校教諭の免許状を併有する幼稚園教員)

②子育てに関する保護者の多様で複雑な悩みを受け止め、適切なアドバイスや指導ができる力などを持った幼稚園教員等

③地域の教育資源との連携に積極的に取り組むことができる幼稚園教員等

などが求められているものと考える。

これらの専門的な知識や能力をもった幼稚園教員等の養成ためには、従来の短大における2年間の教育課程では時間的な制約が大きい。特に、小学校教育までを見通した教員養成を行うことを前提に、専攻科での小学校教員養成を考えた場合、短大と専攻科を組み合わせた教育課程では、短大では保育者養成を中心に、専攻科では教育者養成(小学校教員養成)を中心に行うという形態をとらざるを得ない状況があり、運営上の様々な制約や教育課程上の非効率がある。

さらに、今日の学生の学力やニーズの多様化などを考えると、高度な専門性を育てるためには、4年間という長期にわたって継続的で一人ひとりに合った学習指導、進路指導を行う必要がある。

以上のことから、上述した高度な専門性を有した幼稚園教員等の養成には、四年制大学における4年間の一貫した教育課程による効率的・合理的・組織的に充実した養成が必要なのである。

理由の2つは、現在求められている高度な専門知識と使命感を持つ幼稚園教員等は、同時に、豊かな一般教養と常識的あるいは人間的幅や安定感といった人物性を兼ね備える必要がある。こうした豊かな教養と優れた人物性をもった保育者、教育者の養成は、特に教育や保育の現場で要望の強いものである。しかし、短期大学の2年間という短い期間のなかで十分な教養教育を行うには大きな制約がある(専攻科生の場合も教養教育の中心は短大で行われている)。また、四年制大学の4年間という時間的ゆとりは人間的な幅や広い視野を獲得するのに十分な機会を保障するものである。そこで、四年制大学を設置して幼稚園等の教育現場で求められる人物性を有する幼稚園教員等の養成を目指すことにしたのである。

理由の3つは、既に山口県では、平成16年度に、幼稚園教諭一種免許状等の取得が可能な保育者養成を行う私立四年制大学が2校新設されている。しかし、本県の保育者養成にあって、過去および現在の実績において本学の母体である「山口芸術短期大学保育学科」は最も名誉ある地位を占めてきたと自他ともに認めるところである。その意味からして、本学こそは保育者養成を行うための四年制大学を設置する実績と信頼をもった大学であると考える。また、現在、他の2校は、小学校教諭の免許状を取得することはできない。理由の1つめで述べたように、幼児教育と小学校教育の連続性を踏まえた人材の養成を図る必要があることから、山口県においても、小学校教諭免許状の取得を可能とする幼稚園教員等の養成機関を設置する重要な課題があり、本学はそれに真摯に応えて行きたいと考えている。

(5)本学設置の地域的社会的意義

 短期大学という2年間の課程では、子育て支援(「親育ち」の支援)の充実強化や、地域の教育資源との連携に必要な知識や技術を修得することは極めて困難であった。そこで、本学においては「山口芸術短期大学」保育学科の実績をもとに、さらに高度な幼児教育に関する教育と研究を行い、その成果を地域社会に還元する。具体的には、現職の幼稚園教員等を対象とした講習会や子育て中の保護者を対象とした『子どもフォーラム』等の公開講座を毎年開催するなどし、一層充実発展させて地域社会の教育福祉の向上に寄与する。

(6)教育研究の理念と目的

①芸術を基盤とする教育

 Herbert Read は「Education Through Art :芸術による教育」の中で、「教育の一般的な目的は、個々の人間に固有の特性の発達をうながし、同時に、そうして引き出された個人的な特性を、その個人が所属する社会的集団の有機的な結合と調和させることである。この過程において、芸術教育が根本的な役割を果たす。」と指摘している。

 幼児期から小学校期における教育の目的は、人間としての健全な発達成長を促すため、生涯にわたる人間形成の基礎を育成することである。そして、人格の基礎形成に重要な役割を担うものの一つが情操教育である。この時期における情操教育は、子どもたちの人格形成に極めて重要な役割をもっており、この情操教育の有用な手段となるのが音楽や造形などによる芸術教育である。芸術は豊かな感性を育て、感じたこと考えたことを表現する意欲を養い、創造性を育むことができる等人格形成の基礎として重要な役割を持っている。

 本学は、こうした人間形成や社会における芸術の重要性を理解し、「芸術を基盤とする教育」を実践できる幼稚園教員等、すなわち、音楽や造形などの芸術的表現力・指導力を有し、幼児期から児童期の子どもの教育に携わる者に相応しい人間性と幅広い専門的知識・技術をもった幼稚園教員等の養成のための、新たな教育研究を行うために設置するものである。

 本学は、この「芸術を基盤とする教育」を本学の教育研究の中心にしたいとの意図の下、「学芸」という名称を付したのである。

②芸術を基盤とする教育の実践と理論的体系化

 大学教育の日々の教育実践の中で、上記のような明確な問題意識と教育研究の基本的方向性を堅持し、それを確固たる基盤を持つものにしていくためには、教育現場での実践を理論的に体系化し、それを学問的に深化させることが極めて重要である。

 既に、「山口芸術短期大学」においては、幼稚園教員等としてより高い資質を持たせるための人間教育を行い、社会のニーズに対応することのできる高度な知識を習得させるとともに、「芸術を基盤とする教育」の実践を積み重ね、県内の幼稚園等の施設から保育者養成機関として最も高い評価を得てきた。本学では、この実績を基に大学教育における「芸術を基盤とする教育」の実践をさらに発展・向上させ、それを理論的に体系化、深化させるための研究を行う。

③「子ども学」発展への寄与

 「芸術を基盤とする教育」を実践する能力は、幼児期から児童期にある子どもの教育に携わる者にとって必要不可欠な能力の一つであると考える。しかし、ほとんどの短期大学また四年制大学において、これらに関する充分な教育が行われていないのが現状であろう。

 本学は「芸術を基盤とする教育」を可能にする教員と教育施設・設備が整っており、具体的には次のような教育研究に組織的に取り組む。

○幼児期から児童期の教育における芸術の役割に関する研究

 ・芸術と幼児期・児童期の人格形成(自主性・創造性・社会性)との関連に関する研究

 ・芸術による心身機能促進の研究

○感性と表現の育ちを中心にした子どもの発達と子育てを通しての親育ちの理解と援助のあり方について、発達心理学・児童福祉等の分野からの総合的研究

○子どもの健全な環境としての児童文化の研究

 本学では、子どもを取り巻く環境の変化を踏まえながらこうした研究を進め、その成果を教育実践に活かすことによって一層高い芸術的表現力・指導力、そして応用力を有する特色ある幼稚園教員等を養成することができる。

 また、現在、多様な学問の成果を反映させ、学際的に子どもについて研究する「子ども学」が発展しつつある。2003年には「日本子ども学会」も結成され、全国の大学で、子ども学が講じられるとともに、関連する学科が設置されるなど、様々な研究が行われている。しかし全体的に見れば、諸学の寄せ集め的な面もあり、子ども学の発展深化の努力が積み重ねられているところである。こうした状況のなかで、上述した本学における幼児期から児童期の子どもの発達とその教育における芸術の役割等に関する研究は、豊かな感受性や創造性をもった子どもに対してその個性や主体性を生かしながら成長発達を促し、子ども達がよりよく生きていくためにどのように関わっていけばよいかという、教育において極めて本質的で実践的なテーマを探求するものである。本学における研究は、こうした観点からの研究分野の構築に大きな役割が期待でき、今後の子ども学の発展に大きく貢献できるものと思われる。

2 どのような人材を養成するか

(1)人材養成の方向

 本学教育学部子ども教育学科はこうした「芸術を基盤とする教育」に基づく教育研究の理念と目的に立脚し、山口芸術短期大学が掲げてきた"至誠"の精神を堅持しつつ、教育、研究の両面をさらに充実、発展させ、次のような特色をもった幼稚園教員等を養成する。

① 人間形成および社会の形成における芸術の重要性を深く理解し、自らも豊かな芸術表現力をもち、芸術の素晴らしさと可能性を子どもたちに伝え、共有することのできる優れた芸術表現指導力を有し、また、1-(4)に記したように、

②生涯発達的な視点から、乳幼児期から児童期までの子どもの生活や発達・学びの連続性、すなわち小学校教育との連続性を踏まえた幼児教育に携わることのできる人間的資質や高度な専門知識を有し、

③社会全体で子どもを育てていくことの重要性と時代の要請を理解し、乳幼児の家庭や地域社会における生活の連続性を踏まえて、地域の教育資源を生かしながら教育・保育機関・家庭・地域社会の連携のなかで教育・保育を実践できる、

幼稚園教員等の養成である。

 山口学芸大学教育学部子ども教育学科が養成する幼稚園教員等は、本学の芸術を基盤とする教育を通じて得られた、豊かな感性や表現力、そして芸術的指導力を用いて、現代の子どものおかれた歴史的社会的状況のなかで、教育・保育を構想し、地域住民・保護者等と良好な関係を築きながら、それを実践する能力をもった幼稚園教員等である。こうした人材を養成するうえで、本学は県の中心部に位置し、県をはじめとする公共機関、各種の教育機関、福祉関係機関などから数多くのボランティア要請がある。こうしたボランティア活動への積極的な参加を促すことによって多様な人々との交流を体験することができ、主体性・協調性等、社会的に必要な資質を培い、真に適性ある教育者を養成することが可能である。

(2)卒業後の進路・就職の見通しと支援

 就職先としては、幼稚園・保育所、児童福祉施設、障害者施設、小学校などが考えられる。

 就職支援は学生サービスの重要な柱の一つである。また、学生に対しては種々のガイダンス等を通して就職希望先の決定を促し、一方で模擬面接・模擬試験等を実施して就職を支援する。

 なお、保育現場とは「山口芸術短期大学保育学科」として永年培った信頼関係があり、本学の卒業生の就職に際しても有利に働くものと期待している。

 小学校教員については「少子化」の影響を受けて、一時冷え切った採用教員数も、教育環境の見直し、団塊の世代の退職の時代を迎え、上昇傾向に移りつつある。また、今後、各地域の実情に合わせた、従来とは異なる雇用形態等も考えられる。この場合、地域の要求に即応できるよう地域の教育学部が是非必要であろう。

 「教員需要の将来展望」(URL = http://www.ushiogi.com/juyou.html)によれば、山口県についての教員の需給バランスは、従来の国公立系教員養成機関からの供給だけでは大幅な不足が予想されており、教員養成系大学として地域に貢献できる時機到来と考えている。

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Ⅱ 大学、学部、学科等の特色

1 山口学芸大学の基本姿勢

 幼児教育は、家庭、地域社会そして幼稚園等施設の3者によって支えられてきた。しかし、家庭、地域社会の教育力は低下し、幼稚園等施設についても、幼稚園教員等の資質の不十分さが指摘されており、現在ほど、子どもが育つ上で幼児教育の重要性が認識されたことはかつてなかった。

 今や、教員養成課程を有する大学はその使命を再確認し、家庭、地域社会の教育力の再生・向上、そして幼稚園等施設の幼児教育機能の向上のために、これに応えることのできる資質、すなわち高い専門的知識・技術そして人間性を備えた教育者等の養成に邁進すべきであると考える。

 このような状況の中で、本学は、芸術を基盤とする教育によって優れた芸術的表現力や指導力、子どもの生活や発達・学びの連続性、家庭・地域社会との連携のなかで教育・保育を構想し実践できる、幼稚園教員等の養成を目的として設置するものであり、教員養成大学として、教育、研究、地域貢献を重視した大学運営をしていく決意である。

2 芸術を基盤とする教育および研究

 本学は、芸術を基盤とする教育を理念とし、芸術を通じて自己の人格を高め、子どもの個性豊かな人間形成や、平和で文化的な社会の形成を担う人材育成を目的としている。

自らが芸術を通して自己を表現する喜びを知り、それを他者と共有することの素晴らしさを経験することは、人間形成の最も重要な幼児期から児童期の子どもの教育に携わる幼稚園教員等にとって、必要不可欠な要素の一つである。

以上のような、芸術および芸術を基盤とする教育の意義と重要性を踏まえ、本学では、芸術を基盤とする教育を実践し、その深化、発展のための理論的で体系化された研究を行う。さらに、幼児期から児童期の子どもの教育における芸術の役割に関する研究、感性や表現の育ちを中心にした子どもの発達に関する研究、子どもの健全な環境としての児童文化の研究などを行い、こうした研究成果を本学での教育に還元し、幼児期から児童期の子どもに対して、芸術を基盤とする教育を実践できる幼稚園教員等の養成に生かしていく。

3 地域貢献の重視

 今後の大学の発展は、地域の信頼・協力関係をどのように築くかにかかっている。

 学校法人宇部学園では、永年にわたって山口芸術短期大学保育学科において「芸術を基盤とする教育」に取り組み、県内の幼稚園等から保育者養成機関として最も高い評価を得てきた。しかしながら、山口県内の幼稚園、保育所計341園・所に対して保育者養成のあり方に関するアンケート調査を実施した際(182園・所、回収率53.3%)、幼稚園の約7割、保育所の約6割が四年制大学での教育者・保育者養成を期待するとの回答であった。このことから、本学が四年制大学としてこうした地域の期待に応えていくことが、その責務であると考えている。

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Ⅲ 大学、学部、学科等の名称及び学位の名称

1 大学の名称

山口学芸大学  Yamaguchi Gakugei College

〔理由〕芸術を基盤とする新しい教育(その中心は幼児教育)の創造をめざして、幼児教育・保育・小学校教育を一体化した新しい教育研究分野を構築し、幅広い視野と高い専門性を有する幼稚園教員等を育成し、地域社会に貢献する。

2 学部の名称

教育学部  Faculty of Education

〔理由〕幼稚園教諭一種免許状を中心に、小学校教諭一種免許状の取得も可能とする、教員養成を目的とした学部である。

3 学科の名称

子ども教育学科  Department of Child Education

〔理由〕生涯発達の視点にたって乳幼児期から児童期の発達の連続性を重視し、この時期の子どもとその教育に関する教育研究活動を行う学科である。

4 学位の名称

学士(教育学)  Bachelor of Education

〔理由〕教育研究の分野が乳幼児、児童を対象とする教育学である

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